雇用調整助成金とは?

Friday, August 15, 2025

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阿久津和宏

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専門家が徹底解説!雇用調整助成金(令和7年度版)完全ガイド

はじめに:雇用調整助成金とは?

雇用調整助成金は、景気の変動といった経済的な逆風により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主様のための、従業員の雇用を守るためのセーフティネットです。やむを得ず事業を縮小する際に、従業員を解雇するのではなく、一時的な「休業」、スキルアップのための「教育訓練」、あるいは他社への「出向」といった手段で雇用を維持する場合、その費用の一部を国が助成します。この制度の目的は、失業を未然に防ぎ、働く人々の生活の安定を守ることにあります。経営が困難な時期を乗り越え、大切な従業員と共に未来へ進むための、心強いサポート制度と言えるでしょう。

【ステップ1】受給に必須!クリアすべき基本要件

この助成金を受給するためには、いくつかの基本的な要件をすべて満たす必要があります。ここでは、特に重要な3つのポイントについて詳しく解説します。

1. 経済上の理由による事業活動の縮小

まず大前提として、「経済上の理由」で事業活動が縮小していることを客観的な数値で示す必要があります。これを生産指標要件と呼びます。

  • 具体的な指標:売上高や生産量など、事業活動の状況を示す指標の最近3か月間の月平均値が、前年の同じ期間と比較して10%以上減少していることが必要です。
  • 注意点:毎年決まった時期に閑散期が来るなど、季節的な変動が理由の場合は対象外となります。あくまで予期せぬ経済状況の変化が原因であることが求められます。

2. 従業員の雇用を維持していること

この制度は雇用維持を目的としているため、事業規模が拡大している場合は対象となりません。これを雇用量要件と呼びます。

  • 具体的な指標:雇用保険に入っている従業員数と派遣労働者数の最近3か月間の月平均値が、前年の同じ期間と比べて急激に増加していないことが条件です。
  • 中小企業の場合:従業員数が10%を超えて増加していないこと(ただし、増加が4人以下の場合は問われません)。
  • 大企業の場合:従業員数が5%を超えて増加していないこと(ただし、増加が6人以上の場合は対象外となります)。

3. 従業員との間で書面による協定を結んでいること

休業や教育訓練は、会社が一方的に決めることはできません。必ず労働組合、または従業員の過半数を代表する方との間で、事前に内容について話し合い、書面による協定(労使協定)を締結する必要があります。この協定書は、申請時の必須書類となります。

その他の要件と注意点

上記の3大要件に加え、以下の点も確認が必要です。

  • 雇用保険の適用事業主であること。
  • 申請に必要な書類をきちんと整備・保管し、労働局からの調査要請に協力すること。
  • 過去5年以内に不正受給を行っていないこと。
  • 労働保険料を滞納していないこと。
  • 役員に反社会的勢力との関係者がいないこと。

これらの要件をすべて満たして、初めて申請のスタートラインに立つことができます。

【ステップ2】助成の対象となる措置と受給できる金額

要件をクリアしたら、次に具体的にどのような措置が対象となり、いくら受給できるのかを見ていきましょう。

対象となる期間と日数には上限があります

  • 対象期間:最初に休業などの措置を開始した日から1年間です。
  • 支給限度日数:この1年間のうち、助成を受けられるのは最大で100日分までです。さらに、過去3年間まで遡って通算150日分という上限も設けられています。
  • クーリング期間:対象期間(1年)が終了した後、再びこの助成金を受給するためには、原則として1年以上の期間を空ける必要があります。

対象となる3つの措置

  1. 休業:従業員との協定に基づき、所定労働日に1日単位または1時間以上の時間単位で行う休業です。休業させた従業員には、平均賃金の6割以上の休業手当を支払うことが義務付けられています。
  2. 教育訓練:従業員の職業に関する知識やスキルを向上させるための訓練です。通常の生産活動とは明確に区別して行う必要があり、日常業務をこなしながら行うOJT(On-the-Job Training)は対象外となるので注意が必要です。
  3. 出向:従業員の籍を自社に残したまま、資本的・組織的なつながりのない別の会社へ3か月以上1年以内の期間で出向させる措置です。

受給できる金額(助成額)の計算方法

助成額は、支払った休業手当や賃金の一部が補填される形で計算されます。

  • 助成率
    • 中小企業:支払った休業手当や賃金相当額の 3分の2
    • 大企業:支払った休業手当や賃金相当額の 2分の1
  • 1人1日あたりの上限額8,870円(令和7年8月1日時点の金額)が上限となります。
  • 教育訓練の加算額:教育訓練を実施した場合は、上記に加えて1人1日あたり1,200円が加算されます(特定の要件を満たす訓練では1,800円に増額)。
  • 残業相殺に注意:助成金の対象期間中に、他の従業員が残業や休日出勤をしていた場合、その時間分の助成額が支給額から差し引かれる「残業相殺」というルールがあります。

【ステップ3】申請手続きの2段階プロセスと必要書類

手続きは大きく分けて、①措置を開始する前に計画を届け出る「計画届」と、②措置を実施した後に費用を申請する「支給申請」の2つのステップで進めます。それぞれで必要な書類が異なりますので、しっかり確認しましょう。

A.【計画届】の提出(休業などを開始する前日まで)

まずは「これから、このような計画で雇用調整を実施します」という意思表示を、管轄の労働局またはハローワークに行います。必ず休業等を開始する前日までに提出してください。

  • 休業・教育訓練の主な書類
    1. 休業等実施計画(変更)届:どのような計画かを記すメインの書類です。
    2. 事業活動の状況に関する申出書:売上減少などの状況を具体的に説明します。
    3. 雇用指標の状況に関する申出書:従業員数の状況を報告します。
    4. 事業所の状況がわかる書類:会社案内や労働者名簿、そして売上減少を証明する総勘定元帳や売上台帳(直近3か月分と前年同期分)などが必要です。
    5. 休業協定書 または 教育訓練協定書:従業員と合意した内容を証明する重要な書類です。
    6. (教育訓練の場合)訓練内容がわかる書類:どのような訓練を行うかを示すカリキュラムや講師のプロフィールなど。
  • 出向の主な書類
    1. 出向等実施計画(変更)届
    2. 事業活動の状況に関する申出書
    3. 雇用指標の状況に関する申出書
    4. 出向協定書
    5. 出向契約に関する書類:出向元と出向先で交わした契約書や、出向する従業員本人の同意書などが必要です。

B.【支給申請】の提出(支給対象期間の末日の翌日から2か月以内)

計画届を提出し、実際に休業などを実施した後、かかった費用を請求する手続きです。提出期限は支給対象期間の末日の翌日から2か月以内と定められており、これを過ぎると申請できなくなるため厳守してください。

  • 休業・教育訓練の主な書類
    1. 支給申請書
    2. 助成額算定書:具体的な助成金額を計算する書類です。
    3. 休業・教育訓練実績一覧表:誰がいつ休業・訓練したかの実績をまとめた表です。
    4. 実績がわかる書類:タイムカードや出勤簿など、労働日、休日、休業日が正確にわかるもの。
    5. 支払実績がわかる書類:賃金台帳や給与明細の写しなど、実際に休業手当を支払ったことを証明するもの。
    6. (教育訓練の場合)受講証明書類:受講者本人が作成した受講レポートなど。
  • 出向の主な書類
    1. 支給申請書(出向用)
    2. 出向先事業所調書など
    3. 出向の実績がわかる書類:出向元と出向先、両社の賃金台帳と出勤簿が必要です。

【最重要】不正受給の防止について

最後に、最も注意すべき点についてお伝えします。事実と異なる内容で申請を行うなどの不正受給が発覚した場合、非常に厳しいペナルティが科せられます。「知らなかった」では済まされませんので、必ず誠実な申請を心がけてください。

不正受給と判断された場合の措置

  • 助成金の全額返還:不正に受け取った助成金の返還はもちろんのこと、それに加えて年率3%の延滞金と、受給額の20%に相当する違約金も支払う必要があります。
  • 5年間の支給停止:不正を行った事業主は、その後5年間、雇用調整助成金を含むすべての雇用関係助成金を受給できなくなります。
  • 事業主名の公表:会社の名称、代表者名、不正の内容などが厚生労働省のホームページなどで公表され、社会的信用を大きく損なうことになります。
  • 刑事告発の可能性:特に悪質なケースと判断された場合は、詐欺罪として警察に刑事告発されることもあります。

労働局は、事前の予告なしに事業所へ立ち入って調査を行う「立入検査」も実施しています。申請内容に少しでも不明な点や不安な箇所がある場合は、決して自己判断せず、速やかに管轄の労働局に相談し、正しい手続きを行うようにしてください。

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