
Tuesday, September 02, 2025


経済の構造変化や予期せぬ事態により、やむなく事業規模を縮小する企業があります。その結果、多くの経験やスキルを持ちながらも、非自発的な理由で離職を余儀なくされる労働者が生まれます。こうした人材は、労働市場において貴重な資源であり、その円滑な再就職を促進することは、本人にとっての生活の安定はもちろん、社会全体の生産性維持・向上の観点からも極めて重要です。
一方で、新たな人材を採用する企業側にも、採用コストや教育コスト、そして何よりも「新しい人材が自社に定着し、活躍してくれるか」というリスクが伴います。特に、事業主都合で離職した人材の採用には慎重になるケースも少なくありません。
この「早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)」は、まさにこの両者の橋渡しをするための制度です。事業縮小などにより離職した方を、離職後3か月以内という早期に、かつ期間の定めのない労働契約(正社員など)で雇い入れ、さらに離職前よりも5%以上高い賃金を支払う事業主に対して助成金を支給します。これにより、事業主の採用コスト負担やリスクを軽減し、経験豊富な人材の積極的な採用を後押しします。結果として、離職を余儀なくされた労働者の迅速な社会復帰とキャリアの再構築を支援し、労働市場全体の流動性と安定性を高めることを目的としています。
この助成金は、雇い入れられる「労働者」と、雇い入れる「事業主」の両方が、それぞれ定められた要件をすべて満たす必要があります。どちらの要件も非常に重要ですので、採用計画の段階から入念な確認が不可欠です。
採用する労働者が、以下のいずれかのカテゴリーに該当する必要があります。
これは、前の勤務先が事業規模の縮小などを理由に、ハローワークに「再就職援助計画」を提出していたり、本人に「求職活動支援書」を作成・交付していたりした場合の離職者です。これらの書類は、その方が事業主都合で離職したことを公的に示すものとなります。
倒産や解雇など、事業主の都合により離職した方々がこれに該当します。本人がハローワークで失業給付の手続きを行った際に交付される「雇用保険受給資格者証」の離職理由コード(11, 12, 21, 22, 31, 32など)で確認できます。
【共通の重要要件】
労働者を雇い入れる事業主は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
専門家からのアドバイス:特に注意すべきは「賃金5%以上アップ」の要件です。これは、単に基本給を上げるだけでなく、諸手当を含めた「毎月決まって支払われる賃金」で比較します。残業代は除かれますが、役職手当や資格手当などは含まれます。どの賃金項目を比較するのか、事前に正確に把握しておくことが申請成功の鍵となります。
本助成金を活用するためには、採用活動から採用後のフォローアップまで、一連のプロセスを計画的に進める必要があります。以下の4つのステップが重要です。
採用選考の段階で、応募者が本助成金の対象となりうるかを確認します。面接時などに、前職の離職理由についてヒアリングし、「再就職援助計画対象労働者証明書」や「雇用保険受給資格者証」の提示を求めるなどして確認を進めます。対象者であることが確認できたら、次のステップに進みます。
助成対象となるには、対象労働者の離職日の翌日から3か月以内に雇い入れる必要があります。この「3か月」という期間は非常にタイトですので、迅速な採用プロセスが求められます。また、雇用契約は「期間の定めのない労働契約」であることが必須です。試用期間を設けること自体は問題ありませんが、試用期間当初から無期雇用契約を締結する必要があります。「試用期間中は有期契約」といった形式では対象外となるため、雇用契約書の作成には細心の注意が必要です。
本助成金の最大のハードルであり、最も重要な要件です。以下の2点を確実に実行する必要があります。
雇入れ日から起算して6か月間(支給基準日)を超えて、継続して雇用していることが必要です。また、支給が決定されるまでの間に、本人の自己都合退職はやむを得ませんが、事業主都合による解雇や退職勧奨を行った場合は対象外となります。採用した人材が早期に離職してしまわないよう、適切な労務管理と職場環境への配慮が求められます。
本助成金の申請には、対象労働者の状況や賃金支払いを証明するための様々な書類が必要です。不備なく揃えることが、スムーズな受給への第一歩です。
一定の成長性が認められる事業所(※)が、特に経営状況の厳しい企業から離職した方(特例対象者)を雇い入れた場合に申請できます。
専門家からのアドバイス:書類準備で特に混乱しやすいのが「賃金上昇の証明」です。離職前と雇入れ後の両方の賃金台帳や給与明細を揃え、どの手当が含まれ、どの手当が除外されるのかを正確に計算し、比較表を作成しておくと、申請書の記入や審査官への説明がスムーズになります。
助成金を受給するまでのプロセスは、時系列に沿って進められます。特に申請期限の管理が重要です。
ハローワークや民間職業紹介事業者からの紹介、あるいは自社の採用活動を通じて、対象となる労働者を見つけ、離職日の翌日から3か月以内に、期間の定めのない労働契約で雇い入れます。
雇い入れた労働者を継続して雇用し、離職前賃金より5%以上高い水準の賃金を毎月支払い続けます。この期間の出勤状況や賃金支払いの記録(出勤簿、賃金台帳)は、申請時の必須書類となるため、正確に整備・保管してください。
雇入れ日から6か月が経過した日を「支給基準日」といいます。この支給基準日の翌日から起算して2か月以内が支給申請期間です。例えば、4月1日に雇い入れた場合、支給基準日は9月30日となり、支給申請期間は10月1日から11月30日までとなります。この期間内に、すべての必要書類を揃えて、事業所の所在地を管轄する労働局に提出します。
提出された書類に基づき、労働局で審査が行われます。審査には通常数か月の時間を要し、内容確認の問い合わせや追加資料の提出を求められることもあります。審査が無事に完了すると「支給決定通知書」が届き、その後、指定した口座に助成金が振り込まれます。
早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)は、単に採用コストを補填するだけの制度ではありません。事業主都合による離職というハンディキャップを乗り越えようとする意欲の高い人材、すなわち豊富な経験とスキルを持つ即戦力人材を獲得するための、極めて戦略的なツールです。
この制度を活用することで、企業は以下の大きなメリットを得ることができます。
一方で、本助成金は「3か月以内の雇入れ」や「賃金5%アップの継続」など、クリアすべきハードルが明確に設定されています。成功のためには、採用計画の段階からこれらの要件を織り込み、入社後の労務管理や賃金管理を徹底することが不可欠です。手続きに不安がある場合は、社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。
この制度を有効に活用し、優秀な人材の獲得と事業の成長を両立させてください。
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